はじまり

わたしを含む男女三人は、まず一件目で優雅な日本料理を楽しんだ。
仮に私以外の男をA氏、女をS女史としよう。
私が約束の時間の五分前に料理屋に到着すると、ふたりはすでに到着しており、歓談中であった。
最年長の私は、ゆっくりと座敷へあがり、配膳してあったA氏の横に座った。
ということは、S女子は、われわれ男子と向き合う形で佇むこととなった。
たしかに、そしてはからずも、美人のS女子を眺めながら食も楽しめるという感じとなったから、良しとしよう。
今日の口実は、三人のお祝い。S女史のとある発表会での表彰、A氏の一年前の昇進、そして私の還暦祝いであった。


ほろ酔い

鯛、タラの芽、筋子、アスパラ、卯巻き、しんじょ、お造り、蕎麦、焼き鮭、筍の炊き込みご飯、桜餅などを食べながら、ビールに始まり、あとは日本酒の滋賀の七本槍、石川の鶴の里、新潟のNechi(根知谷産五百万石)、宮城の浦霞などをじっくりと味わいつつ、話題は会社のこと、生い立ち、酒の趣向など、大したことも話していないのに、時間はあっという間に経過するのである。


バーでのたしなみ

一軒目がお時間となる間際、S女史がまだ呑み足らぬようなので、わたしが「じゃ、次はバーかな」というと、S女史は待ってましたとばかり「わたしいま、頭に二軒浮かんでます💘」と言う。「ほんなら、そこにしよか。」と、彼女の言う店と場所はすでにわたしの頭にも浮かんでいた。
一軒目でお勘定をするあいだに、わたしが持参したカクテル手帳を見ながら三人で予習した。そう、バーに行ったら迷わず、スッと注文するのだ。こうでなくっちゃ。
到着して三人は、S女史を真ん中にして座った。それもとても自然に入店順に座ったからそうなった。
とりあえず、予習したとおり、私が口火を切った。「マスター、ウイスキーサワーを」、S女史は、キングスバレイ、うっかり?車で来てしまったA氏はソフトドリンクだ。
美人のS女史はマスターに色目を使いながら、「ねぇ、マスター、次は私に似合うカクテルを作って下さるぅ~♡」という。
おお、なんと場慣れしているのか、酔ってる私はいささかも驚かなかった。
若いマスターは、ややうろたえつつも、なんとか態勢を立て直した。
二杯目は、たしかジンライム? どうかな。「ジンは何になさいます?」
「ん? じゃビフィータで」「すいません切らしてます」「じゃなんでもいいよ」とか会話しながら、わたしのより先にS女史の前に来たのは、ドライ・マンハッタン。
おお、なんと男らしい!、酔ってる私はいささかも驚かなかった。
マスターとの会話も楽しんでいるうちに、時間は翌日を迎えようとしていた。

「あっ、私もう帰らないと。」 おまえは、シンデレラか!
ん~、ま、でも美人だからしょうがないか。おじさんが送って行こう。
「またのお越しをお待ちしております。」
マスターは、美人がどうなるか心配で見送っている。
なんもせんちゅうーに。


おしまい

すっかり酔ってるものの、お腹は空いているようである。
無事に自宅に辿り着いたわたしは、なんとお茶漬けを二杯もたべた。らしい。。。

えっ、覚えてないの? とは妻。
あっ、そうだった、そうそう、うんうんとは私。あれ、何その疑いの目。覚えてますって!

酒のみは、みんなたいへんだなあ。


カクテル完全バイブル

本稿の背景

久しぶりにちゃんと、しっかり、きっちり食べて、飲めたのが嬉しくて、この思い出は書いておこうと考えたのだ。


食事、バーの感想

まずまずであった。とてもおいしく、楽しくもあった。


主な登場人物紹介

わたし:今年ついに還暦。言い換えたら定年だもんね~。気が楽。ほんと!?
A
氏:私の元部下。今は私より偉い。
S
女史:わが社きっての美人社員。いうことなし。酒がめっぽう強い。
日本料理のおかみ:おかみというより、お婆ちゃん。スマホで撮ってくれた写真が全部ピンボケ。。。
バーのマスター:めがね、若い。三谷小幸喜。


おわりに(まとめ)

お酒は適量が良い。一軒目から落ち着いて自分たちのペースで飲めるところがよい。(反省点:コースの場合、食べるのが一番早い人に合わせるそうだ。私は食べるのが遅くて、次から次へと出てくるので焦った。若い人が気をつかうべきやなあ。)
バーは時間がゆっくり。そのため頼んだカクテルも、マスターとひと会話してから作りはじめる。結果として楽しい時間を長く楽しめて、飲み過ぎずに済んだ。ありがとうマスター!
わたしが全額PAYさせてもらった。
そして、次回の幹事はA氏に押し付けたのであった。。。たのしみー。。。
(次回、『美女と野獣その2』へつづく、といいな。)




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